AI~人工知能~はミュージシャン・作曲家という仕事を奪うのか

更新日:

仕事柄”ロボット化・IT化・自動化”をターゲットにした展示会に行く機会があります。日本の製造業のいわゆる「スマート工場化」は待ったなしの状態。今乗らなければ数年先は会社が立ち行かなくなるという危機感から、僕の会社でもトップダウンで「デジタル化せい!」の指示が飛んでいます。

そんなデジタル化ブームの中、展示会に行くと必ずあるブースが「AI」を取り込んだ技術。いわゆる人工知能を使った自動化技術を推進・確立していこうという動きが年々増しています。「AIによって世の中の仕事の〇〇%が奪われる」なんてことも言われるようにもなりました。

このAIの技術、間違いなく音楽などのクリエーティブな分野にも裾野を広げてきます。本当に近い未来の話です。

AI【人工知能】がミュージシャンになる未来

数年前まで「テントウ虫程度の知能しかない」と言われていたAI~人工知能~ですが、今やAIというワードを聞かない日は無くなりました。自動運転技術にはAIが欠かせませんし、コールセンターや株価の自動取引などにも活用が進んでいます。もう「新しい技術」などではなく、取り入れて当然のスタンダードになりつつあるのですね。

AIが音楽に及ぼす影響を考えてみました。どんな分野で活用されうるのでしょうか。

AIによる作曲

「自動作曲ソフト」というものは昔から存在しました。作曲というクリエイティブでセンスが必要な作業を、手早く、悩むことなくPCにやらせたい、と思うのは今も昔も同じ。昔からある自動作曲ソフトは、登録されているコードやジャンル、リズムといったパラメータを自動もしくは半自動でパターン化していくものでした。誰でも出来る反面、”よくある感じ”に作曲されるのが限界でしょう。この限界を超えて、独自性を出すには、やはり人の手による微調整が必要です。

ところがAIはこの問題をクリアすることができるでしょう。ビッグデータに接続されたAIに「1970年代のモータウン風のイメージで曲を3つ作って。長さは4分くらい」などと話しかけるだけで、数分で楽曲が完成する時代もそこまで来ています。人が考え出すより早く、的確です。職業作曲家にとっては脅威ですね。

作曲というより作業となり、文字通り「誰でも曲が作れる(?)」時代が来ようとしています。録音機材すら必要なくなり、すべてがクラウド(ネット上)で完結する未来が見えますね。

マスタリングの分野ではAI・クラウド化が進んでいる

ちなみに、音楽制作工程で必須の作業「マスタリング」については既にAIを用いたクラウド化が進んでいます。LANDRという海外のサービスですが、ネット上のLANDRアプリに自作曲を読み込むと、AIによって適正にマスタリングしてくれるというサービスです。

AIは自動学習しますので、当サービス公開当時より格段にマスタリング精度が上がってきており、プロも使用するようなサービスとなってきました。通常マスタリングという作業は数時間~数日かけて「その道のプロ」が行う作業です。LANDRはこれをわずか数分/1曲で行うわけです。試してみて気に入らなかったらマスタリングパラメータをイジってもう一回マスタリングし直し、なんてことも朝飯前。しかも300円~/1曲からという手軽さ。

AIによるマスタリングの精度はこれからも上がるでしょう。その技術がDAWに取り込まれたり、自動作曲~マスタリングまで一貫してできるツールやサービスも当然出てくると思われます。これまで「作曲は作曲家、マスタリングはエンジニア」などと分かれていたプロセスが、たった一か所、一人の作業で完結することができるようになりそうですね。

AIによる作詞

AIによる作詞は、作曲同様自動化する技術が生まれてくるでしょう。現在でも自動で詩を作成するサイトはありますが、これは登録されているワードをランダムに表示しているにすぎません。AIならば文脈を読み取って適正に表示することができるはずです。また、「流行りの言葉を入れて」や「Aメロは日本語でサビは英語」といったオーダーや、「青をイメージして」「海を感じる詩」といった抽象的なワードからも作詞が可能になるかもしれません。

ただ、AIが人間味のある詩を作り出すには、まだまだ時間は必要でしょうね。作詞は非常に個性の出やすいパーツです。無個性の詞が重宝される向きもありますが、クリエイティブな人ほど個性を重んじるものです。その人でなければできない”言い回し”をAIが肩代わりすることはできません。強い個性を持った作詞家は、AIに取って代わられる心配はないのかもしません。この考えも数年先はひっくり返っているかもしれませんが。。。

詞はメッセージそのものです。AIが心を持つまでは、ミュージシャンの役目のひとつは「気持ちの代弁者」という時代が続きそうです。

AIが歌う

ロボットに歌わせる技術の研究は随分前から進められています。「発話ロボット」など、人工的に声帯を作り出し、声を出させるところまで来ています。ボーカロイドのようなサンプリング技術とはまた違った角度から、誰のものでもない声を作り出す研究がされているのですね。現状はとても人の声には聞こえない程度の発話しかできないようですので、歌うまでにはさらなる研究が必要でしょう。

ボカロなどのサンプリング技術とAIを組み合わせれば、上記で自動作曲・自動作詞したものを歌わせてみることが可能です。その時のAIの役割は、”いかに人間らしく歌わせる(鳴らす)か”でしょう。人工知能によるダイナミクスやブレスのタイミング、ビブラートなどのパラメータの自動調整です。

この分野で技術革新が起これば、「メジャーデビューしたアーティストが、実はロボットだった」なんてニュースを聞く日もくるかもしれません。

ただ、すべて自動で生成したものに魂が宿るとは思いません。世間では評価されるかもしれませんが、自動生成のみで音楽を作る人を「ミュージシャン」とは呼ばないでしょうね。

AIによる楽器演奏

AIに生楽器を演奏させることも可能になるでしょうし、現代のサンプリング技術ならば生楽器さながらの音をPCのみで再現できるようになってきています。音源を聞いただけでは、サンプリングやシミュレーションなんのか、本当に演奏者による生演奏なのかわからないほどです。

数年前にジャズギタリストのパット・メセニーが自動演奏装置によるライブツアーをしました。(たしか日本にも来たような・・・)すべての生楽器を使った自動演奏です。生演奏はそれぞれの楽器が空気を震わせますので、PCスピーカーからの再生では味わえない臨場感が味わえるでしょうね。

このときのパット・メセニーの演奏にもコンピュータは使われていたようです。現代ならAIを使って、より生々しく演奏させる方向でシステムを組むでしょう。人がいないのに楽器から音が出るというのはちょっと無機質な感じがします。こういった形式のライブやコンサートに需要があるのかは謎です。装置がものすごい高額になるでしょうし、スペースも人が演奏するほど取りますね。AIを使って「省人化する」というメリットが失われています。特定の層にはウケるかもしれませんが・・・。

自動演奏は機械的で面白くない!?

パソコンが自動演奏した音源は機械的で面白くない

数年前まではそういった考え方が主流でした。それを回避するために作曲家(マニピュレーター)は1音ずつの音量や発音タイミングのパラメータを打ち込むわけです。より人間が演奏したように似せて。この「人間が演奏したように」というところがミソで、人間は正確に演奏することが苦手です。対してコンピュータは入力された通りに演奏することが得意です。つまり、人間のようにリズムも多少ヨレて、音量にばらつきがあるのが音楽的というわけです。

この”人間っぽさ”をコンピュータに制御させる機能はすでに実装され始めています。例えば、ドラム音源などで「ヒューマライズ」といった機能があります。機械的に打ち込んだ音を、あたかも人間が叩いたようにバラつきを与える機能ですね。現在のヒューマライズにはAIは使われていないでしょうが、AIが使われるようになれば、より生々しい自動演奏も実現可能です。そこには需要があるため、すでに研究が始まっているかもしれません。

結局音楽制作においてAIにさせたいことの大半は「人間の代わり」なのですね。

そしてミュージシャンは居なくなった

これだけAIの音楽界における可能性を書いてみると、ミュージシャンという職業の存続すら危ぶまれる予感もします。実際に淘汰の対象になる音楽ジャンルや職業の人もいるでしょう。

危機感を煽るような記事になってしまいました。しかし、AIという技術進化を「ミュージシャンの終わりだ」と捉えるのはあまりにも短絡的です。AIのサービス・技術を上手に取り入れることで、ミュージシャンはさらに活動しやすくなると思いませんか?特に時間の無いサラリーマンミュージシャンにはあかるい未来だと感じています。

僕もそうですが、週末ミュージシャンはとにかく音楽にかけられる時間は少ないですよね。ギターも練習したい。歌も練習したい。曲も作りたい・レコーディングもしたい。ライブもしたい。どれか欠けてもバランスが悪く、音楽活動が停滞していると感じてしまいます。

しかし、レコーディングや曲作りにおいてAIの技術を取り込むことで、どれほどの時間短縮が望めるでしょう。アレンジやマスタリングといった「経験」が必要な作業はAIに任せ、自分自身は練習やライブのブッキングと言ったことに集中できるわけです。時間を作り出せるというのは技術革新の一番素晴らしいところだと感じています。AI様様といった気持ちにすらなるかもしれませんね。

共存できる限り「そしてミュージシャンは居なくなった」という未来は訪れないと思っています。僕もひとりのミュージシャンとしてそうありたい。

僕の希望は、プロモーション分野にAIが使われるようになること

アマチュアミュージシャンの一番不得意とするところは、「自分自身の売り込み」でしょう。いわゆるプロモーションです。

どういう仕組みか想像できませんが、このプロモーションをAIが代替してくれるようなシステムが出てくると嬉しいなと思います。

たとえば、自分のオリジナル曲を分析して、AmazonやSpotifyなどの定額ストリーミングサービスのユーザーに、同じような楽曲が好きならば流してくれるとか。おすすめアーティストとして紹介してくれるとか。

この「人の混みを分析する」ってことがAIなら出来る気がしています。Amazon等はビッグデータと言われれる、膨大な顧客データを持っています。このデータと、自作曲の分析結果をマッチングしてプロモーションしてくれる仕組みが提供されれば、非常に価値のあるものだと思います。僕は間違いなく使いますね。(まぁ金額にもよりますが(笑))

さいごに

仕事で関わっているAIやロボットなどの新しい技術が、いつか音楽に浸透してくるだろうと思い記事にしました。

AIによって仕事が奪われると叫ばれる昨今ですが、そのAIを作り込むのは私たち自身です。AIはコミュニケーションが苦手ですし、本当の意味でのクリエイティブな作業はできません。逆に人間はその部分が得意です。ミュージシャンという職業は、AIが進化しても無くならないという説もあります。僕もそう思いますが、職業自体は残っても、その職に就ける人の割合はものすごく減るでしょう。AIが作った楽曲の方が売れるなら、レコード会社はミュージシャンと契約する必要も発掘する必要もなくなるわけですから。

コンピューターと競うのではなく、コンピューターの及ばない部分で力を発揮できるミュージシャンだけが、生き残れるんでしょうね。音楽を作るという作業がより身近になる点は大いに歓迎すべきことです。誰でも簡単に作詞差曲できたとしても、音楽の本質的価値は変わりません。ましてや人が苦労して作った楽曲は尊いもの。自動で作れるならあえて自分で苦労して作る、という逆発想のミュージシャンだって増えるかもしれません。いずれにしても、AIにより音楽が変わることは間違いありませんね。

個人的に苦手な編曲・ミックス・マスタリングといった分野では、ガンガンAIによるサービスを使っていきたいと思っています。まずはマスタリングサービスのLANDRからかな^^

Twitterで記事の更新と弾き語りに関する耳より情報をお知らせします☆

当サイトはWordPressテーマ「Affinger5」を使用しています。

カテゴリー

  • この記事を書いた人
アバター

Y.Tamai@C4M

たまいやすゆき/1980年生まれ。ギター歴30年/弾き語り歴17年。サラリーマンでエンジニアをしながら、「たまいよーすけ」名義のアコースティックユニットで年間20~30本のライブを継続中。◇プロフィール詳細◇ライブのご依頼:呼んでいただければ全国どこへでも♪

-■私と音楽

Copyright© Chord For Me , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.